ゲイリーマン浩平の紀行文です。旅行中に起きたささやかな出来事を筆者らしく文章にしています。今回は台湾人に恋をして振られる迄の数ヶ月を綴っていきます。vol.3は、主に「一人よがり」についてです。

亞洲日和「台湾失恋物語」vol.2

入国審査を終え、税関を抜けて、真っ先に喫煙所に向かった。もしかしたら、忠永が空港に迎えにきているかもしれないと思っていたが、連絡はきていなかった。淡い期待は、たばこの煙と共に暗い台北の夜空に消えていった。

桃園空港から台北駅まではバスで約50分だった。台北駅から二二八公園の近くにあるホテルまでは、歩いて移動した。事前にどのホテルに宿泊するかを忠永には伝えてあったので、もしかしたら、ホテルの前で待ってるパターンか?と思って、ホテルの前に停車している車の助手席を覗きこんだ。すると、男女のカップルが濃厚なキスをしている最中だった。思わず「I’m sorry!」といって、そそくさと建物の中に入った。過度な期待が自分を追いつめ、結果として、欲求不満に陥る。冷静に考えればわかるが、その一連の流れの中に、忠永の言動は出てこない。感情のマスターベーション。ただ、決して慰められないただの自虐行為だった。

部屋に入って、シャワーを浴びて、忠永にLINEを送ろうとベッドの上で文章を考えたが、結局、送信ボタンは押さなかった。バスの中で聴いていた島袋寛子の”As time goes by”の歌詞に影響された。「もういいんじゃない?」そう思って、眠りにつくことにした。浜崎あゆみのJuly1stを一緒に聴いて忠永と眠るという希望は、いよいよ叶わなかったのだ。広いダブルベッドの上で、無駄にたくさん置かれた枕と喪失感を抱いて泥のように眠った。

【2016年7月2日】

6時半に目が覚めた。相変わらず、忠永からのLINEはない。「メソメソ・クヨクヨは嫌い」という二丁目時代の先輩の言葉を思い出し、考えるのではなく行動してみることにした。ホテルの朝食をモリモリ食べて、プールで泳ごうと決めたのだ。

早速、西門駅からMRTで移動し、45分くらいで大安運動中心に着いた。50mプールでがしゃがしゃ泳いだ。水は殴っても文句を言わないし、水中なら叫んでも周りに迷惑がかからない。忠永の影を探したが、無論、彼はいなかった。寝ても覚めても忠永ばかりで、いい加減病気なんじゃないかと思った。

ホテルの近くで昼食を済ませ、体だけはリフレッシュさせてから、忠永にLINEを送った。「Busy today?」元彼についての小競り合いや連絡がなかった空白の期間は棚上げして、今、今日のことだけに論点を絞った。

じっと待つのは苦手なので、 中山運動中心という別のプールに向かった。ハッテン場に行って、がしゃがしゃセックスでもすれば、心と体が乖離されてきっと余裕ができたはずなのだが、きちんとした恋愛がしてみたかった。今となってみれば、きちんとした恋愛というもの自体、どんな形であれ2人が決めればいいことだと思うが、どうしても愛されたかった。だから、型にはまったきちんとした恋愛をしようとしていた。量産型のクッキーのような誰からも受け入れられる恋愛、それで良かった。

続く・・・

※プライバシーに配慮して、登場人物の名前は偽名になっています。また、若干の妄想も含まれています。

<最終編集:2016年7月>

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