ゲイリーマン浩平の紀行文です。旅行中に起きたささやかな出来事を筆者らしく文章にしています。今回は台湾人に恋をして振られる迄の数ヶ月を綴っていきます。vol.4は、主に「再会」についてです。

亞洲日和「台湾失恋物語」vol.3

中山運動中心からホテルに戻り、ホテルの近くの交差点で信号待ちをしていると忠永からLINEがきた。やや距離があったが、ホテルのwifiをスマホが拾っていたのだろう。自分は、基本的に海外ではホテルのwifi以外はインターネットを利用しないようにしている。旅行中は、不便さを存分に味わいたいからだ。

「Welcome to Taiwan」という一言だけだった。忠永も過去より、現在に論点を合わせているのだろうと思った。青信号を一回見送り、自分の中の女々しさをなだめてから「Thanks」「Do you have a plan tonight?」と聞くと、まだ仕事中だから終わったら会いに行くよと返信がきた。

ついに、感動の再会である。何時になるかもわからないが、部屋で忠永からの連絡を待った。ひたすら、待った。そして、小一時間が過ぎた頃「今から向かうけど、どこのホテル?」と聞かれ、ホテルの名前を返信し、30~40分で着くと返信がきた。

17:30に着いたと仮定して、ディナーを食べに行くのが先か、セックスが先かとわしゃわしゃ考えているうちに、急に性欲が襲ってきて、エロ動画を観て気持ちを落ち着かせた。これからこんなことするのかと思い、まるでセックスを知らない高校生ような青臭い感情を抱いた。

結局、忠永がホテルに着いたのは、18:00ちょい前だったが、自分はあまり準備ができていなかった。一週間ぶりのテレビ電話が鳴り「Which floor?」と聞かれ 「Eleven」と答えるとエレベーターに乗ったのか、ぶっきらぼうに通話は切れてしまった。そして、11階のエレベーターホールで、忠永との2カ月ぶりの再会を果たした。

自分は大粒の涙を流し、スーツを身にまとった忠永と抱き合った。しばらくの沈黙が続き「I missed you」と彼が耳元で囁き、我々はそっと唇を重ねた。2人だけの世界は、ねっとりと甘く濡れていった。というのは冗談で「Long time no see!」とTシャツ短パン姿で登場した彼を、ただただ部屋に迎え入れた。「How are you?」「Hungry?」「Let’s have a dinner」とトントン拍子に話は決まり、結局、全く色気のない再会となった。若干の失念に駆られたが、自分も腹が減ったいたのは事実だったので、彼のペースに合わせることにした。

忠永は、ホテルまでバイクできていた。自分はバイクのニケツが苦手である。タイやベトナムで嫌という程乗ってきているし、これほど交通機関が発達している国でわざわざバイクのニケツで移動したくないと思っていた。しかし、予想通り忠永はにこりと笑ってヘルメットを差し出した。「まず、ガソリンスタンドに行く」と言われ、ふと思った。そんなに急いで会いにきてくれたのかと。そして、ヘルメットを被りながら口元がほころんでいった。

バイクに跨がり、主演コウヘップバーンの「台北の休日」は開幕した。初めは、周りの目もあるし、気恥ずかしくてくっつかないよう背筋を伸ばしてに座っていたが、バイクが加速していくにつれ、恐怖心に駆られ、体を委ねた。 怖いし 、不安だし、どこへ向かっているかもわからない。しかし、どんなに加速しても、停止しても、決して二人が離れることはなかった。

牛肉麺を食べて、蔡依林のCDを買うのに付き合ってもらって、コンビニに寄って、ホテルの部屋に戻った。理想的なデートだと思った。本当に楽しかった。バイクを降りた後も、2人は同じ目的地に向かっていくのだと信じていた。忠永にしがみついていた手を離したのは自分だが、目的地が違うと言われて、もう乗り続けることはできなかった。自分の目指す場所は、徒歩でしか辿り着けない場所だと、やっと悟ったのだ。忠永が部屋を去ったあの時に。

続く・・・

※プライバシーに配慮して、登場人物の名前は偽名になっています。また、若干の妄想も含まれています。

<最終編集:2016年7月>

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