筆者が旅先で出会った人々を紹介する「ゲイビト。」今回は、シェムリアップのゲイサウナで知り合った子持ちバイセクシャルのダラ(仮名)さんです。衝撃的なカミングアウトでした。


ゲイサウナで知り合った生粋のシェムリアップっ子

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「アイシテル。」とゲイサウナのロッカーで声を掛けてきた彼は、笑顔の優しい青年だった。ダラ(仮名)さんは、シェムリアップで生まれ育った生粋のシェムリアップっ子だ。現在35歳で、市内のレストランのシェフをしている。とても流暢な英語を話すため、逆に筆者が言葉をつまらせることが多かった。古くから観光で栄えてきたシェムリアップの人々は、英語が上手い人が多い。有り難いことにダラさんは、筆者に興味を持ってくれたようで「タチか?ウケか?」と聞かれたので「タチだよ。」と答えると「俺もだ!」と豪快にガッカリされた。

カンボジア人の特徴として、タチかウケかが非常に重要なようだ。抜き合いやしゃぶり合いはセックスとしない姿勢は、非常に好感を持てる。また、タチの割合が日本より多いのも特徴と言える。ダラさんは昔、ウケに挑戦してみたことがあるらしいが、ケツを掘られた後、3週間も寝込んでしまったそうだ。ケツ云々の前に、3週間も休める環境が羨ましいと思った。「ハグさせてくれ。」と言われたので、丁重にお断りしたが、力任せにハグされ、頬にキスまでされた。減るものではないのが、力で押さえ込まれて、何かをされるということは、あまり気持ちの良いものではないと知った。

元カノはアメリカ人、息子は10歳?!

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「タバコをくれないか?」と聞かれたので、図々しいなと思いながら差し出した。「彼女はいるか?」と聞かれたので「彼氏じゃなくて?」と聞き返すと「実は、俺には彼女がいるんだ。」とダラさんは身の上話を始めた。「彼女はフィラデルフィア出身で、10歳になる息子もいるんだ。」これには、おっ魂げた。ぶっちゃけ、カンボジア人の中でも冴えない彼に、彼女と息子がいるとは思ってもみなかった。「結婚はしてないの?」と聞くと「今、彼らはフィラデルフィアに住んでいるよ。」「どうやって知り合ったの?」「彼女は10年前、この街で英語教師をしていたんだ。」「じゃぁ彼女の生徒だったの?」「いや、違う。俺が道端で仲間たちとダンスをしていたら、彼女も加わってダンスし始めたんだ。すっかり打ち解けて、2人で飲みに行って、そのまま一緒に住むようになって、3カ月後には彼女のお腹に息子がいたよ。」いやいや、急展開にも程がある。さっきまで筆者を口説いていた彼に白人のアメリカ人の彼女と息子がいるとは、ある意味、ショッキングな事実だ。しかも、道端で知り合うとは、アンジェリカもきっと驚くだろう。

「息子さんと会ったことは?」「ないよ。でも、最近スカイプで会話はしたけどね。本当は会いに行きたいけど、アメリカに行くにはビザが必要だし、そんな金もないよ。そもそも、俺と彼女の関係も終わってしまっているしね。息子が18歳くらいになったら会いに来てほしいと思っているよ。」と、複雑な表情を浮かべた。アジアでは、欧米人や日本人が現地人を孕ませて、国に帰ってしまうケースをよく聞くが、逆のパターンは初めて聞いた。しかも、彼がバイセクシャルで、ゲイサウナでそんな話を聞くとは想像もしていなかった。

将来、彼の息子は彼の元を訪ねるだろう。息子はアメリカ国籍を有し、アメリカ人として成長していく。自分の元に会いに行く資格を有さない彼に会ってどう思うか、筆者には全く想像できない。事実を受け入れることは、時に過酷かもしれないが、それだけしか前に進む方法はない。どんな親だろうと、親がこの世にいるだけで幸せなことだといつか分かってほしいと切に願う。

<最終編集:2016年3月>


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