ゲイリーマン浩平の紀行文です。旅行中に起きたささやかな出来事を筆者らしく文章にしています。今回は沖縄に向かう機内での話です。領土問題について考えさせられるフライトになりました。

【2016年1月28日(木)】

仕事を終えて、羽田空港へ移動。いつ見ても、モノレールから見える東京タワーは美しいものだ。羽田空港の国内線の利用は、実に10年ぶり。国際線に比べるとチェックインも保安検査もとても簡素で、空港に着いてものの15分くらいで搭乗ゲートに到着してしまった。機内では、右側が通路、左側がキャバ嬢だった。そのキャバ嬢の左隣には、連れの冴えないおっさんが座った。この日のANA NH479便は、定刻20:00を約15分遅れての離陸。自分は、買ったばかりの村上春樹氏の「ラオスにいったい何があるというんですか?」を読みながら、機内での時間を過ごした。タイトルに惹かれて買ったのだが、ほぼ著者の欧米での紀行文集だった。ラオスについて書かた文章は、まさに「本の一部」だった。

それはいいとして、しばらくすると、キャバ嬢がおっさんに何かを愚痴っている事に気付いた。どうやら、自分が肘掛けを占領していることが気に障っていたらしい。「もう超狭いんだけど!」となぜか責められ始めたおっさん。これは、面白いと思い、肘掛けをそのまま占領し続けてみることにした。悪天候の中での飛行だったため、機体は思っていた以上に揺れた。そして、揺れる度に肘でキャバ嬢に圧をかけた。誤解のないように言っておくが、これはあくまで不可抗力の範囲である。そして、ついにキャバ嬢がキレた。

「もう無理!まじで帰る!苦痛!」と筆者にも聞こえるように不満を口にしたのだ。ここで、自分に怒りをぶつけてきた場合「申し訳ないですけど、CAの方に言ってもらえますか?」としらっと大人の対応を披露するのだが、情けないことにキャバ嬢は、再びおっさんに怒りをぶつけたのだ。その後も不満を口にはするものの、自分には何も言ってこないキャバ嬢と連れの冴えないおっさん。そういえば、昔、韓国のソウルに向かう飛行機の中で、座席を倒したら、斜め後ろの韓国人男性に「彼女が(テーブルに伏せて)寝られないから戻せ!」と大声で注意をされたことがある。思い出すだけで、胸くそが悪い。「ソーリー、ソーリー。」と、座席のリクライニングを元に戻してしまった自分に今でも腹が立つ。

しばらくしてドリンクが配られ、一息ついてからトイレに行ってみた。すると案の定、キャバ嬢が肘掛けを占領していた。この時、初めてキャバ嬢の顔を正面から見たが、キャバ嬢というよりは、温泉街にあるようなスナックのチーママのような風貌だった。ここはエコノミー席だが、彼女の前髪だけはバブリーだった。席に戻り、また本を広げ、キャバ嬢が使っている肘掛けと背もたれの空いている部分に肘を掛けて、読書を再開した。もちろん、お互いの肘は触れている。最初は、負けてたまるかと言わんばかりにキャバ嬢も肘に力を入れてきたのだが、その抵抗も虚しく肘掛けは、再び自分が占領することとなった。そして、戦いに疲れたキャバ嬢は、冴えないおっさんの肩を借りて、そっと目をつぶった。

なにも、自分はキャバ嬢に嫌がらせをした訳ではない。あくまで「領土を侵害された時、相手にきちんと自分の意志を伝えなければ、奪われてしまいますよ。」という事を身をもって体験してもらいたかったのだ。そこに明白なルールが存在していないのであれば、尚更である。自分の想いは、きっと彼女に伝わった事だろう。

さて、そうこうしているうちに沖縄に到着した。1月でも沖縄は、空気に湿気があるため旅行前から喉の調子が悪かった自分には有り難かった。ゆいレールの終電で、県庁前駅に移動。「ニューホテルおきなわ」が今夜の宿だ。このホテル、国際通りに面していてロケーションはなかなか。チェックインをしながら思ったが、フロントが最上階にあるため、連れ込み部屋としてはもってこいだ。ただ、実際に連れ込めるかは検証していない。部屋でスーツから私服に着替えて、発展場に向う。沖縄の夜は、これからだ。

<最終編集:2016年2月>

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